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安いアニメ、見分けられますか? [アニメを作る]

最近のアニメはほとんどの作品が1クール、
つまり12週で終わる構成で作られています。

自分の子供の頃を思い返すと、
アニメは大抵、1つのタイトルを1年間にわたって放送していました。
サンライズのロボットものも、日アニの名作ものも。
あるいはもっと長く続くタイトルもありました。

いつから放送期間が短くなったのか?
おそらく、深夜枠のアニメが増えてからでしょうね。

さて、いつまで経っても貧乏スタッフしかいないアニメ業界ですが、
それを説明した動画を見つけました。

『ここ数年のアニメが○○すぎる理由…
 「過去の名作アニメのような作り方はもう出来ません」
 アニメ業界の変化とその原因とは。』

      (YouTube「サイコパスおじさん 岡田斗司夫 切り抜き」より)
  ※岡田さんに関しては、賛同できないという方もおられると思うので自己判断で視聴してください。

長年この業界で飯を食っている私も、
委員会のプロデューサーの出資比率が品質低下の元凶だとは理解していませんでした。

発言権が欲しいばかりに作品を酷いものにしているとは。

岡田さんの言葉が全て正しいと言うつもりはありませんが、
この委員会の予算に関する話は色々と合点が行きます。

ただし、「葬送のフリーレン」が手抜き作品だというのは全く的外れです。
信じないように。

どんな日常芝居でも、ある意味アクションシーンより手間はかかるものです。
(ちゃんと描こうとすれば、ですが)

良いアニメーターは、予算があれば集まるというものではありません。
多少なりとも集めやすいとは言えますけど。

また、良いアニメーターがいれば必ず高品質な作品になるとも言えません。

そんな単純な話じゃないんです。

付け加えれば、
アニメを見る視聴者は、なぜそのアニメが高く評価されているのか、
言い換えればどんなアニメが高品質なのか、ほとんど分かっていません。

好きか嫌いか、は言えても、
なぜ良いのか悪いのかは解っていないのです。

とても残念です。

深夜枠のアニメは確かに予算が少ない。
だから十分な人材を確保することは難しいでしょう。

でも、アニメ作りは人数でその品質が決まるわけではありません。

視聴者にはとりあえず、『絵コンテ』の良し悪しが分かるようになって欲しい。

シナリオがイマイチでも、絵コンテさえしっかりしていれば
ワクワクするアニメは作れます。

…もちろん、絵コンテの要求を満たせるアニメーターがいれば、ですけど。

逆に、どんなに優秀なアニメーターがいても、
絵コンテが悪いと映像の品質が上がることはありません。

エヴァンゲリオンフリーレンも、絵コンテが良いから
あの迫力のある、観る人を惹きつける映像が作れたのです。

あそれから、演出家の仕事も大事です。
(私が演出家だから、ってのは言いっこなし)
アニメが分業制である以上、現場監督たる演出家が仕事をしないと
まともな映像にはなりません。

さて。
「製作委員会制」が諸悪の根源だということは見えました。
しかし、そこに身を寄せないとリスク管理できない、というのも本音です。
日本のアニメ、これからどこへ向かうのでしょうか?

そのうち、中国をはじめとする諸外国の方が品質の高いアニメを作るようになるでしょう。
そうなった時、果たして日本はアニメを代表的なコンテンツ、とか言えてるんでしょうか?

私は未来を悲観的に捉えています。
そう長くは続かないと。

このままでは、ね。
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心が病まないように注意しないと。。。 [アニメを作る]

とある作品にメインスタッフとして携わったのですが。

ネットでの評価にただただ驚くばかり。

良い評価に驚いているのではありません。
否定的な評価がまあ多いこと。

詳しく言うと色々とバレてしまうので伏せますが、
小説が原作です。それを元にした漫画もあります。

否定的な意見はどうやらこの小説や漫画を読んだことがある人のようなんですね。

「自分の知っていることと違う」

「自分が思っていることと違う」

これが理由で『酷い作品だ!もう見ない』と言うわけです。

原作付きの作品をアニメ化する上で、
絶対的に重視しなくちゃならないのは

<原作に忠実に作る>

ということ。

こちらも趣味で、自費でやってるわけではありませんから、
出版社や配給テレビ局、そして原作者にお伺いを立てながら作っています。
なので、よほど実力のあるクリエイターがその作家性を遺憾無く発揮して
別物に変えてしまう、なんてコンセプトでも無い限り、
勝手な改変ができるわけではないんですよ。

さらに言えば、アニメを作るスタッフはその道のプロで、
知識も経験も十分な人材が頭を突き合わせて創作しているんです。

そういったスタッフを超える何を、
批判してる人たちが持っていると言うのでしょう?

ただ単に ”個人の好み” でものを語るにはあまりにも無責任過ぎるのです。

まあ、発言や表現の自由がこの国では保障されていますから
何を言っても良いんですけどね。

上から目線で作品をこき下ろすほとんどの人は、プロ目線からすれば

「無知でかわいそうなアホが恥ずかしいことを言ってる」

としか感じられません。

残念なのは、そう言う人の発言の方が通りやすいと言うこと。
また、きちんと作品を評価できる人の少ないこと。

確かに酷い作品はあります。
同業者として色々と歯痒く、同情するところでもありますが、
私が手がけた作品はそう言うレベルではありません。

…そんなにハイクォリティでもありませんが…

スタッフであることを隠したくなるような仕事はしていません。

…後悔は多々ありますが…


さて。
最後まで観てくれる人がどのくらいいるかはわかりませんが、
私個人としてはマツダの自動車のような作品と捉えてもらうのが理想です。

つまり、支持する人は決して多くないが、好きな人にはとことん響く、感じです。

暖かい春が来ることを望みます。
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その分類には無理がある [アニメを作る]

子供が将来、なりたい職業は何なのか?

「ユーチューバー」とか答えられて閉口していたのももはや古い話で、
最新の調査では信じられないような結果が出てきました。

「ニフティが調査
  小学生に聞いた”将来なりたい職業”
  2位は『歌い手』『学校・幼稚園の先生』、1位は?」

                    ITmediaビジネス ONLINE より)

この結果を元に、朝の情報番組でタレントがアニメ制作会社を訪れ、
アニメーターの仕事をレポートしてましたが…

それ、全然違うよ、外れてますよ、とため息が出ました。

そもそもアンケートの分類を見てみると、

『マンガ家・アニメーター・イラストレーター』という括りになってます。

この3つ、全部違います。1つに括って良いことじゃあない。

件の情報番組ではヒットアニメのキャラをタレントが描いてみたりして、
なんか舞い上がったレポートをしてましたが、
アニメーターの実情が語られることはありませんでした。

ベテランアニメーターが「1000枚は描きます」と言ったり
若手アニメーターが「厳しい先輩から残業しろとか言われることはありません」
なんて言ってるけど、それで得られる給料が、小学生が目指しても良いものかどうかなんて
一切触れることもなく、フワーッとコーナーが終わりました。

まあでも、少しでも本当にそこを目指そうとする子供が増えてくれるのであれば、
こんな的を外しまくった取り上げ方でも喜ぶべきだとは思っています。

漫画家は当たればデカい。
当たらなければどうにもならない。

イラストレーターは認められれば一定の需要はあると思います。
漫画家のように「一発当てる」的な形にはならないと思いますが。

あと、最近のネットに上がる動画等で、
音楽に合わせて人物画が表示される的な映像が多々ありますが、
あれはアニメーションではありません。間違えないでください。

イラストにカメラワークをつけているだけで、アニメではありません。
仮に複数の絵を切り替えて変化をつけていたとしても、
それは強いて言えば「マンガ」に近いものでしょう。

『時間軸』を表現していないものはアニメとは言えないのです。
(時間を表現するのとは違いますよ)

さて、アニメーターが一人前になり、しっかり稼げるようになったとして、
生活に困らない、程度以上にお金が入ることはほとんどありません。

ごく一部に、『権利』を持ちながら作画する人がいますが、
そんな人たちでもまあ、漫画家の足元にも及ばないでしょう。

私が親でも、アニメーターという職業は勧めたくないですね。


…ちょっと文が荒れてきたので落ち着きます。

この記事で言いたいことは、
これくらい一般のアニメに対する見方はズレている、ってこと。

どんな人気作品でも、それを作っている人たちは
決して儲かってはいません。

でも、そこを目指してくれる若い人たちに辛い思いはさせたくない。

解決策は非常に下世話な単語に行き着きます。

『金』

もっと製作費を上げろー!
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ほんとに日本の作品? [アニメを作る]

『意外と知らない「アニメ番組」その制作の舞台裏…
   30分番組に3000万円、海外の作画ではクォリティが下がる』

                         現代ビジネス より


別に作り方そのものを理解して欲しい、なんて思ってはいません。

…うーん、まあ、知ってもらっても良いのだけど。

何って、「アニメの作り方」のことです。

ブラックだ、なんて判で押したような言葉で例えられることが多いアニメの現場ですが、
実際にどんなものなのか、知ってる人はよほどのアニメ好きでもいないと思います。

知ってる気になってるだけ。

本当の現場の惨状は、当事者にしかわかりません。
そんなことはどの職種にも言えることですが。

とても強く違和感を覚えるのは、
日本において、「アニメーション」と言うものは
子供から大人まで慣れ親しんで、人生の糧になったり大きな影響を与えたり、
世界に目を向けても日本を代表するコンテンツとして高い評価を得たりと、
その存在の大きさは誰もが認めるものですよね。
にもかかわらず、アニメを作る現場の人たちは、
…特にプロダクションワーク(作画関連の工程)を担うスタッフたちは、
おそらく一般の半分から1/3の低賃金で働いています。

テレビで放送される30分番組の制作に携わる人間は数百人に昇りますが、
リンク先の記事にあるように製作費が1000万円の場合、
単純に人数、仮に200人としますが、頭割りしたら5万円、ですよね。

ちなみに30分番組1本を作るのに2〜3ヶ月かかります。
5万円、月で割ったらいくらになります?

複数本の掛け持ちができるほど仕事の内容は楽ではありません。
(やらざるを得ないのでやってますけど)

さあ、現場の惨状が理解していただけたでしょうか?

そうです。ブラックにならざるを得ない、その理由は
あまりにも安い製作費にあるのです。

リンク先の記事でも言われていますが、
人件費の安い海外に作画を振ってこれまで何とか凌いできましたが、
昨今話題になっているように、30年前から人件費が上がっていないのは
日本位のものです。
40年前は韓国、
20年前からは中国、と出し先は変わってきましたが、
どちらも金額的メリットはもうありません。
それでも海外出しをするのは、
一定の量が簡単に捌けるからです。

そこに品質に対する配慮はありません。

残念ながら、日本人と同じ感覚で物創りができる国はそう多くはないのです。
あったとしても、その人件費は日本の数倍でしょう。

最近観たあのアニメ、
あなたはその出来具合に満足しましたか?
さすが日本のアニメーション、と納得できましたか?

私も商売がら、
頑張って放送されているたくさんのアニメを観ようとしていますが、
よくできてるなあ、と思える作品はそのシーズンで
大体2・3本です。

作画の品質が高くないのは言うに及ばず、
シナリオ、絵コンテ、演出、
それらに「どーしてそーなった?」と疑問を持つ作品は決して少なくない。

止め口パクの可愛い女の子に
好きな声優が声を当ててるから満足、と言ってる人は
「アニメファン」ではありません。



…と、愚痴を書かせていただきました。
まさに今、私が海外スタッフのレベルの低さに頭を抱えているところなので。

でも、給料もらえて
大きな不自由なく暮らせているだけで
私は恵まれているのだと思います。
老後の保証は何もありませんが。

仕事中に机でタヒねれば後腐れがないかな。

日本のアニメはそんな感じです。

ハリウッドみたいにストライキとか、やれれば良いのだけど。。。

あ、いけね、仕事しなくちゃ。
休日出勤が無駄になる。
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『差』ではなく『違い』 [アニメを作る]

秋アニメも終盤に差し掛かる師走の始め。
みなさまいかがお過ごしでしょうか?

さてそんな時期ですが、私が今観ているアニメで一番楽しみにしているのは

「ぼっち・ざ・ろっく!」です。

私はギャグアニメが好きなので、
この作品では毎回大笑いさせてもらっています。

もっとも、この作品を単に”ギャグアニメ”とくくるのは間違っていますが。

楽曲も演奏シーンもとてもイイ!
多分おじさんでも楽しめます。
おじさんが言うのだから間違いない。

もう一つ、待ち遠しい作品が

「不徳のギルド」

最近増えてきた”エロ”系アニメですが、
とても丁寧に作られていて、
観ていると内容に反して心洗われる作品。

あとは
毎週が劇場版、別格クォリティの「ベルセルク 黄金時代編 MEMORIAL EDITION」
(詳細はこちら
安定の品質「SPYxFAMILY」

「うる星やつら」は。。。
う〜ん、ちょっと微妙です。
個人的には、現代に合わせてアレンジした新しい作品となることを期待していたのですが、
内容はほぼアニメ一期のまま。黒電話が出る始末。
それじゃあ懐古主義のおじさんにしかウケないんじゃないかなあ。
単なるリメイクであり、今やる意味があったのかちょっと弱い感じ。

そして「艦これ いつかあの海で」ですが…
私を含めた提督(ゲームのプレイヤーのこと)以外をまるで無視し、
説明を一切省いた内容はまあ、良いとしても、
とにかく常に危機感に煽られて鬱々とした雰囲気は疲れちゃいます。
史実を知らない人には目的が分かりにくいし、
史実を知っている人には良い結末が最初から見えません。

他にももちろん、面白いアニメ作品はありますが、
挙げていたらキリがないのでこの辺で。


さて。
昨今、制作が間に合わなくて放送スケジュールが壊れる作品が出ています。
具体的には、
「異世界おじさん」
「ゴールデンカムイ」
「艦これ いつかあの海で」

長い国内アニメの歴史の中で、危うい状況になった作品は
実はいくつもあります。
ちょっといたたまれないので作品名は記しませんが、
原画に色をつけただけで放送することは珍しくなかったのです。
(通常は動画に色をつける。原画だけだと紙芝居状態になる)

品質を落としてまでも放送したのは契約の縛りがあるからですが、
それが今は破られることも数を増やしている、と。

過去もそうですが、『パッケージ版』(VHS・DVD・Blu-ray等の製品)として発売する際、
手直しする時間的な余裕があるため、放送はとにかく間に合わせることが優先されてきました。

しかしこの数年で、放送の品質を落とすことが許されなくなってきているのかもしれません。
いちいち絵を止めてチェックする「作画崩壊警察」がいるためか、
またはインターネットで簡単に不具合が広まってしまうためか、
あるいは納品の条件が厳しくなっているのか。

制作サイドである私にもその理由は明確ではありませんが、とにかく、
数年前では考えられないほど、スケジュールの破綻が増えているのです。

そう、上に挙げた作品の、放送できない理由は漏れなく
「スケジュールの破綻」と思われます。(真相は知りませんが…)

そもそもアニメのスケジュールは基本的にグダグダです。

最後は何とかやっつける。間に合わせる。
落としたらどうなるか(ガクブル)
…ずっとそう言われてきたので、実際に落とした作品を私は知りませんでした。
打ち切り、とかはあるんですけどね。

スケジュールが破綻する理由はいくらでもありますが、
本当に単純に『間に合わなかった』と言うことです。

本来、どんな理由があるにせよ、間に合わないじゃあ済まないハズなのです。
”事実”は私の理解を遥かに超えたところにあるようです。
あとはもう、自分が同じことにならないよう、頑張るしかありません。
(今現在、2024年放送のシリーズ作品のメインスタッフとして机に向かっています)


長くはなりますがアニメでもうひとネタ。

先日、あるまとめサイトでアニメ作品の描写についての記事を見ました。

それは「ビールの入ったジョッキ」についてのこと。

2つの作品を比べ、片方の描写が甘いと指摘されています。
かなりバカにするようなこき下ろし方をしているのですが、
こう言う記事を真に受けてはいけません。

いえ、ビールの表現の状態そのものは言われている通りです。
見るべき点は、『作品に合わせた描写の仕方』なのです。

ただただリアルに、細かく、緻密に描き込むことが全ての作品において正しいわけではありません。
2つの作品は世界観も主張も視聴対象も違います。
どちらにも同じ正解があるわけではない。
当記事のタイトルで示した通り、
これは『品質の差』ではなく、『主張の違い』なのです。
それすら解っていない人がワケ知り顔でネットで自論を展開している。

まあ、何を言おうが自由だと、この国の建前はそうなってますが、
だからこそ、発言には責任を持たなくてはならない。
かの記事を上げた人は、この恥をしっかり受け止めなくちゃならないんですよ。

試しに以下のキーワードで検索してみてください。

『ぼっち・ざ・ろっく! チェンソーマン ビール』

ご自身の目で確かめてください。
キャラデザインや状況を見て、どんなプロップ表現をするのが適切か。
何を見せるシーンで、視聴者に何を見てほしいとスタッフが考えるか。

アニメの奥はもっと深いのです。
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崩壊してるのは作画か視聴者か? [アニメを作る]

アニメ好きを自負する方々なら聞いたことがるであろう
『作画崩壊』という言葉。

字面の通り、作画が崩れてしまうという
絵で映像を作るアニメーションならではの、
品質に対する批難の言葉です。

そこに突っ込んだ記事を見つけたので読んでみてください。

『プリキュア手掛けたアニメ監督が語る「作画崩壊」真の理由
                      揚げ足取りの場合も』

                       DIAMOND online より

記事を書いたフリーライターのかたは
アニメの現場を擁護するために書かれたのだと思いますが、
少し言葉が足りない、というか、
かなり小さい視点で語っておられることが
私には残念に映りました。

コメントを寄せた監督さんの言っていることに間違いはありません。
ただ、部外者にわかりやすいよう、要点を絞って話しています。

あるいは、受け取る側(ライター)の理解が追いついていないのかもしれません。
または、読み手(読者)の理解力を考えて記事を要約しているのかも。

ここで語られている『作画崩壊』とは、
主にキャラクターやプロップ、メカ等の
フォルムやディテールに関することです。

キャラが似てない、くらいならまだ知らず、
目がロンパリ(片目がロンドン、片目がパリを見ているからロンパリ。
視線が左右でバラバラになってることを指す)だったり、
片手の指が6本あったりといった全く許容できない間違いもあったりしますが、
それは”作画”全体の中の一部でしかありません。
そして、誰にとっても判りやすいイージーミスでもあります。

それが起こる理由は記事の中にある通りですが、
実はこれが理由の全てという訳でもありません。

昨今のアニメを見るに、
絵そのものはもちろん、映像の作り方自体もガタガタな作品は少なくないのです。

ところが、視聴者はそれに気付かない。

だから深夜のアニメは無くならない。
だって、品質が低くても見てくれる人がいるから。
さらに言えば、安く作れるのでクライアントにとって都合が良い。
あわよくばヒット作になって金儲けができる。

…甘いよ、作る側も見る側も。

作画崩壊をはじめとした品質の低下が起こる理由は、
実は後継者を育てられない業界の体質によるところが大きいのです。

アニメーションは「総合芸術」ですから、
関わる人は全ての工程において「クリエイター」であり、「アーティスト」です。
そもそもセンスが必要な『創作活動』で、それをなんとか商業ベースに載せているわけです。

”品質”と”利益”という、ともすれば相反する事柄を出来るだけ高いレベルで達成するには
それなりの知識や経験が必要です。
ま、そんなのアニメに限ったことじゃないですけど。

残念なことに、この知識や経験を後世につなぐことができていないのです。
しかも、後継者そのものの数が少ない。

それはやはり、制作費が安いことに行き着く。
状況を改善するには、桁を一つ上げないとダメでしょう。
3割り増しとか、倍増とかじゃあ話になりません。

逆にいうと、そんなに少ない予算で現場は動いているのです。


さて。
ここからは矛先を視聴者に向けます。

あなたは、ひどい映像を見せられているのですよ。

え? かわいいキャラが喋っているから満足だって?

それ、そもそも「アニメ」って言って良いのかな?

都市伝説のように業界で語られている話があります。

『キャラを動かしたら絵が崩れた。それを見た視聴者から
 「俺の推しになんてことするんだ!」とお叱りが来た。
 なので、キャラは動かさずに”止め口パク”で見せるようにした』

馬鹿げた話ですが、おそらく実話です。
アニメーションなのに動かすと文句を言われる。
可愛い女の子の絵に、お気に入りの声優が声を当てればそれで満足、
なんて言ってる人を、アニメファンとか呼ぶのは
私は悔しいです。

私はアニメを作って、観てもらう側の人間ですから、
視聴者に対して文句を言うべきではないでしょう。でもね、
より良い品質を求めてクリエイトしたことに何も反応がなく、
本質と違うところで批難されるのはなかなか辛いものなんです。

これは視聴者にも考えてほしい。
『何が”良いアニメーション”なのか、その基準は何か?』

放送されているアニメ作品の中には、
レイアウトがメチャクチャでパースが出鱈目なカットや
それ以前にカットの繋ぎが成立してなかったり、
カメラ位置が十分に吟味されていなかったり、
大体にして画面の作り方が稚拙で情けない表現になっているものがあるのです。
(絶対に作画崩壊しない『3Dアニメ』でも、これらは避けられません)

あくまでも私見ですが、そんな残念な作品の割合は半分ぐらいはあるのでは。。。

キャラ崩れを見て「作画崩壊だー」なんて騒ぐ前に、
あなたの、アニメーションを評価する基準を振り返って欲しいと、
作り手として思うのです。

その行き着く先は、アニメ作品の減少です。
それとともに、弱小プロダクションは淘汰されていくでしょう。

それも悲劇ではありますが、
実際、アニメなんて儲かる商売ではないのです。

日本の給与水準と同じく、
アニメの制作費はこの30年、上がっていません。
いや、もっと前から変わっていないかもしれません。

韓国や中国へ下請けに出すことでなんとか成立させていましたが、
もはや人件費は日本が一番低いとさえ言える状況です。
そう遠くないタイミングで業界が破綻します。

アニメーションを作る側と、
アニメーションを観る側の両方に
大きな意識改革が必要です。
できるだけ早く。

もうそんなに時間はありません。

作画崩壊が起こる理由は冒頭の記事にある通り、予算の問題です。
でも、もっと深い視点でアニメーションを観ることができれば、
作品自体が許容できないレベルのものもあるということです。

ただ、それ自体がダメということではありません。
より良い作品にはより高い価値を認めましょう。

小学生の描いた絵と
AIの描いた絵と
ピカソが描いた絵、
全て同じ価値ではありません。
評価の基準は各々で違うのです。

見る側もそれを理解してほしいし、
理解しないままではずっと酷い映像を見せられることになります。
(酷いアニメを見てもそれに気づかない人は、
 中途半端な批判なんてやめた方が良い。恥ずかしいから)

遠回しに言えば、
作画崩壊の理由の一端を見る目のない視聴者が担っているとも考えられるのです。



あああ、
解りにくい文章になってしまいましたが、
言いたいことの要旨はこうです。

『本当に酷い映像を正しく「ヒドイ」と言える目を持たないと、
 損をするのは視聴者自身だよ』

「作画崩壊」という言葉を使いたいだけの”俄ファン”は
永久に損をし続けます。
そうならないように、観る側もしっかり見識を高めた方が良いと思います。
単に「個人の好み」だけでなく、客観的な評価ができるように。



う〜んやっぱり、
私が言って良いことじゃないな、コレ。

忘れてください。。。
(でも記事は消さない)
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さんじゅうろくねんぶり、だってエ!? [アニメを作る]

『「うる星やつら」完全新作で再びTVアニメ化、
   声優は変更 あたる役は神谷浩史・ラム役は上坂すみれ』



…ん?

んんっ!?

やるの? 新作?

えーっと、やりたいです、演出。

会社の代表に言ったら、
なんとかなりそうな雰囲気。


私がこの業界に入ることを決断させた作品。

やる、のか…

やれるのか。。。?

なんだか複雑。

う〜〜ん。
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希望に満ちたアニメ業界 [アニメを作る]

日本のアニメーション作品は好きですか?

私はまさに、アニメを作る側の人間なワケで、
もちろん、好きだからこの現場に身を置いています。

ここでアニメ好きであろう皆さんに、
日本のアニメ業界について質問させてください。

日本のアニメ業界って、
世界の最先端をいくスゴいところだ、
と思いますか?

「当然だ」
「日本のアニメは世界一」
「クールジャパンの筆頭」

そんな答えが聞こえてきそうです。

でも、内情は全く違います。
正反対と言って良い。

日本国民の多くは、アニメーションを見ません。
なので、上記の質問はちょっと意地悪ですね。

数十年前とは違って、現代は年代性別問わず、たくさんの人がアニメを見ています。
そんな人たちでも、アニメ業界の実情は全く見えていないでしょう。

よくアニメを見る、という方、
エンディングクレジットまで見ていますか?

スタッフの名前を覚えていますか?

アニメーションは、絵を描き、
それが動いて見えるように作り上げるものです。

つまり絵を描く人、それこそが大切な要素だと言えます。

今、放送されている多くのアニメーション。
その作画スタッフの半分近くが日本人ではないことを知っていますか?
(実際には日本人を優先してクレジットに乗せるため、半分以上かと)

コンビニのバイトと同じです。
日本人はアニメーターになりたいとは思いません。
芸術を下地にした大変な仕事なのに賃金が安いため、
誰も目指そうとしないのです。当たり前ですね。

この先、外国人スタッフの比率はもっと上がります。

90年代のアメリカのアニメーションに少しヒントがあるでしょう。

当時、アメリカのアニメの多くを、日本で制作していました。
作品の方向性を決める「プリプロダクション」はアメリカでアメリカ人が行いますが、
それ以降の実作業はほとんど日本人がやっていました。
理由は『安くできるから』。
もちろん、要求された品質をクリアできた、というのもそのひとつでした。

気づけば、アメリカのアニメーターはほとんどいなくなってしまった。

そりゃそうです。
ディズニーのアニメーターともなればプール付きの家に住めました。

でも、日本のアニメーターは風呂無しのアパートに、しかもそこにも帰れないような激務を、
引っ越しもできないような安い賃金でこなしていましたから、
誰かがたくさん儲けられる仕組みを作れた、ということでしょうね。

残念なことに、2000年代に入るとアメリカは日本より安い中国に下請を出すようになり、
日本に入るアメリカ作品の仕事は激減しました。

さらに、3DCGの開発により、
アメリカは失った制作現場を国内に取り戻すことに成功します。

アメリカの例と日本の現状。
違うのは、日本は製作費が安いために
3DCGで業界を立て直すことができない、ということですね。

また、3DCGが普及する代わりに
手描き職人の数が減ってしまうことも考えなければいけません。


さて。
このあまりにもブラックな業界、
なんとかする方法があるのでしょうか?

私は、業界自体を立て直す方法は無いと考えています。
つまり、日本のアニメーションはこの後、急速に衰退すると思っています。

ただ、ごく一部の”勝ち組”として生き残ることは可能かもしれません。

うまく時代に魅入られ、
思いがけずヒット作を授かる会社になることです。

ま、狙ってそんなことができるのなら
誰も苦労しないんですけどね。


では最後にこんな記事をご紹介。

 『中国を「侵略」した日本アニメ、ここから形勢逆転できるのか=中国』
                              Searchina. より

この記事の内容は既に現状から遅れています。
中国人による中国国産アニメはたくさん作られていて、
日本でも放送されていたりします。

確かに中国の若者は日本のアニメが好きですが、
長い目で見れば、生まれ育った環境で生み出された作品の方が
親和性が高いのは当然です。

やがて日本人も韓国やヨーロッパ諸国のように、
放送されるアニメを、外国製とも知らずに
自国のものとして見るようになるのです。

え、それが良いものであれば問題ない、って?

ふーんそうですか。
ふ〜ん。。。
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「これだから日本のアニメは」と中国人に言われる日 [アニメを作る]

今も活況を見せる日本のアニメーション。

でもその内情は、
後継者不足でもうボロボロ。

作品は基本、中国に作業の大部分を発注しています。

ほんの数年前までは、中国の労働者(あえてこう書きます)は
日本からの仕事を歓迎していました。
得られる金額が大きかったからです。
言ってしまえば儲かった。

しかし今、中国の経済が上向くにつれ、
日本から依頼される仕事は旨みの少ないものになっています。
しかも、日本の基準で精査されるものだからたまらない。

ただでさえ儲けが減っているのに、
短時間のくせに要求品質が高い。

現在、日本からのアニメの下請けを営む中国人たちは、
単に金を儲けるのとは違う目的を持っていることも少なくありません。

日本の制作スキルを身につけ、
自分たちのオリジナル作品を世に出すことを夢見る人たちです。

素晴らしいことですよね。
そうでなくちゃ。

かつて日本も世界に、アメリカに追いつき追い越せで
国力を上げてきました。

中国の人たちがそうする事に我々が言えることはありません。

さて、その延長線上にあるのはどんな状況でしょうか?

日本からの仕事を受けてくれる中国企業は減っていき、
日本のアニメーションはその数を大きく減らす事になります。

また、中国人クリエイターの力が上がり、
良質な作品を、しかも大量に発表するようになります。

もうすでに、日本のアニメーションは衰退期に入っているのですよ。

 関連記事:『中国の若者は「もう日本製より中国製がいい」、
            その消費意識に起きているヤバい変化』


最近の国内作品は、
数は多いですが品質はあまり良くはない。

理由はたくさんありますが、その一つに
企画や脚本の弱さが挙げられます。

今、アニメ業界で働く比較的若い人は、
『お約束』の違和感に気付きません。
子供の頃からその便利な表現を見慣れてきたからです。

だから、お話が酷く薄っぺらい。
全くリアルではないし、ロマンもない。

日本のアニメーションを存続させていくためには、
資源を集中するしかありません。

大幅に数を減らし、作品を吟味し、
制作単価を上げ、現場で働く人たちの生活レベルを上げ、
後継者を丁寧に育てるのです。
(数を減らすのは商業作品のみ。アマチュアは1本でも多く作れ!)

アニメの経済効果は恐ろしく高いはずなのに、
現場の人間は歯を食いしばって低賃金に耐え、
将来も見えないまま目の前の作品にかじりついています。

もしも「アニメが好きだ」とあなたが思うのなら、
ぜひこの問題意識を共有して欲しい。

あ、なんかこんな呼びかけは
あの有名な『ソニーの逆説広告』になっちゃうのかな?
こちらの記事、”劣勢と新聞広告”の欄参照)

いやまあ、事実だから仕方がない。

私もいつまで体がもつか分かりません。
権利収入が得られるような企画を残して隠居したい。
これを目標に仕事を続けます。
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あなたが”純粋”であるならば『イデ』の加護があるだろう [アニメを作る]

日本のアニメーション界の巨匠、

 富野由悠季 監督

残念ながら私は仕事でご一緒したことはありませんが、
私にとっては「大先生」です。

氏の著作 『映像の原則』で勉強したもので。

冨野監督、といえば多くの人が

「ガンダムを作った人」

と答えるでしょうね。
ま、納得。

私が冨野監督の作品で一番好きなのは、

『伝説巨神 イデオン』

作品について語ると長くなってしまうので、
ここでは言及しません。

言えるのは、ぜひ観るべき、ということだけ。

(代わりにこの記事を読んでください

  『40周年「イデオン」はなぜ忘れられたのか
       「ガンダム」富野由悠季もうひとつの傑作』
)

もし時間を持て余している人がいたら、
この作品を手に取ってみても良いんですヨ。

TVシリーズ39話全て、頑張って観てください。
その後に劇場版を観るのですが、
最後までTVシリーズを見ていれば『接触編』は観ても見なくてもどちらでも。

ただ、39話見た後の『発動編』は
人生を変えるくらいの衝撃をあなたにもたらすでしょう。

最近ヒットしてる劇場アニメで語られる”優しさ”なんてかけらも無い、
救いがあるかもわからないようなハードなお話が、
80年代の技術のアニメで描かれるのですからもはや拷問です。

が、必ず報われます。

そこを目指して頑張ってください。損はさせません。
(いや、責任は持てないけど…)

ちなみにもう1タイトル、私が好きな作品を挙げます。

『無限のリヴァイアス』

同じサンライズ作品ですが、作られた時代が違いますので
作画的にはほぼ現代のクォリティ。

この二作品の共通点は、「ままならない」というもどかしさ。

主人公たちが悩むさまを見て、
何かを感じてください。

年末年始の空き時間に、
是非!!


映像の原則 改訂版 (キネマ旬報ムック)

映像の原則 改訂版 (キネマ旬報ムック)

  • 作者: 富野由悠季
  • 出版社/メーカー: キネマ旬報社
  • 発売日: 2011/08/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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