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CG(AI)を使っちゃダメ?(長文) [映像・芸術]

3DCGIで作ったキャラクターを使用したCMが放送されています。

ちょっとした話題になりましたが、
その内容は「誰?」という素直なものから
好きとか嫌いとか、取るに足らないものだったと思います。

ところが。

こんな意見もあるようです。

 『「悪びれることもなく…」有名二世俳優 伊藤園のAIタレント起用CMを猛批判、
                            アメリカでのストにも言及』

                                  「女性自身」より)

んー、どうなんでしょうねえ。

確かにアメリカの業界の考え方にも一理はありますが、
どんなツールを使うか、使う側が選べない、って言うのはおかしいと私は思います。

俳優を使うと恐ろしい額の出演料が必要だし、
スキャンダルのリスクもある。
だったらCGで良いじゃん。品質も上がってるし。

そう考えるのって、悪びれなきゃいけないような後ろめたい行動なんでしょうか?

そもそも、使いたい俳優がいない場合は?
CGの表現の可能性に希望が持てた場合は?

それでも高い金を払って俳優を起用する?

『ハリウッド』を守るためのルールとしては関係者のストライキも
なるほど、と思うことはあっても、
日本の一企業がそこに忖度する必要って、あるんでしょうか?

そして、実は同じようなことはあらゆる業界の中で
すでに起こっているんじゃないでしょうか?

私が一番身近に感じているのは、やはりアニメーションの現場です。

3DCGIでキャラクターを動かすテレビアニメなんて、もう珍しくはありません。

そして確実に、手描きアニメーターの仕事が奪われています。
しかももう何年も前から。

ハリウッドと日本のアニメ業界とを同じ括りで見ることには相当な無理がありますが、
状況自体は何も変わりません。

代わりに3DCGIのオペレーターやクリエイター、
それを専門とする映像制作会社が多数、立ち上がっていますし、
ツールの機能が上がり、しかも安価で提供されることで
幅広い人々に映像制作の門戸が開かれました。

まあ、私はこの流れを歓迎しているわけではありませんが。

プロとアマチュアを隔てる垣根が曖昧になってきていることに
危機感に近い感情を覚えています。

プロとアマチュアって、全く違うんです。

「できる」からプロなのではないし、
アマチュアだから「できない」と言う世の中でもない。

そこを分けるのは、出来上がったものの品質と、
それをコンスタントに世に出していけるのか、
それで得た利益で生活していくのか、と言うところでしょう。

その判断は誰にでもできるわけではありません。

ピカソの絵を見た時、多くの人は「ヘンな絵」と思うでしょう。
これを論理立てて説明し、素晴らしいものと認められる人がどれだけいるでしょう?

ネットに溢れる「アニメーション」とされているものの多くは、
私から見れば「イラスト」、あるいは「漫画」です。

私が問題だと思うのは、
受け手側、見る側の判断力や意識の低下です。

俳優の演技の良し悪しや、作品の品質を見極める力がどんどん落ちていっている気がしています。

そう言う人たちにとって、生身の俳優が演技しようがCGがプログラムで動こうが
見分けがつかないですよね。

そもそも、(件のCMのような)CGを作るスタッフたちは、
CGと見破られないように作っているわけですから
その判定はプロであっても難しくなってきてはいますが。
ただ、まだ”違い”は感じられます。

そこでどう差別化できるか、に力を注ぐべきであって、
「オレの権利を守るためにお前らが考えろ」
的な主張って、なんだかカッコ悪いですよね。

とはいえ、先に述べたようにアニメ業界ではすでに手描きアニメーターの職場が奪われています。
成り行きに任せていていい話ではないとも言えます。

しかしここで、実は違う角度から見ると単純な問題ではない側面も出てきます。

実は、CGIが発達したから手描きが減った、と言うわけではなく、
『手描きで良い作画ができるアニメーターが減ってきたから3DCGIを使うしかなかった』
と言うのが、少なくともアニメ業界では正しい見方なんです。

もーフクザツ、です。

新しい技術はお金がかかるもの。
3DCGIも最初はそうでした。
しかし作品数が増えている昨今、腕の良いアニメーターは捕まらず、要求品質が高まる中で、
むしろ3DCGIの方が安いとも考えられる、そんな時代になっています。

ちなみにディズニーで考えるともっと分かりやすい。

かつて手描きのアニメーションは、アメリカが手本でした。
高いハードルでした。手が届かないほど。

日本は、その性質を最大限発揮してどんどん力をつけ、
独自のアニメ表現を確立していき、いつしか世界に認められるようになりました。

アメリカのアニメ会社はそんな日本を見て、
「日本に作画を下請けさせれば、安くアニメが作れるんじゃね?」

実際、ディズニーをはじめとする名だたる制作会社が日本を下請け先として使いました。
(日本はさらに韓国を下請けに使っていたことはとりあえずここでは語りません)

さて、ここで何が起こったかというと、アメリカのアニメーターが減ってしまったのです。

そりゃそうです。アメリカのアニメーターはハリウッド俳優よろしく、
プール付きの一戸建てに住めるほど高給取りでした。(皆んなじゃないけどね)
そんな人たちが仕事を無くしていくのは当然の流れです。

やがて、日本の人件費も上がり、アメリカにとって日本に仕事を出すメリットがなくなりました。
次に目をつけたのは中華人民共和国。中国です。

その辺でアメリカはふと、気づくのです。こりゃイカン、と。

失ったアニメーターの穴を埋めるためにアメリカがとった手段が『3DCGI』でした。
幸い、先進的な制作会社がいくつか存在しましたし、予算の桁が日本とは圧倒的に違います。

やがてディズニーも3DCGIを使い、対象年齢をより広く設定した作品を作り、
アニメーションにおける復権を果たしたのです。


話を戻しましょう。

CGキャラを使ったCMに抗議するのって、理に叶ってますかね?
自分の権利が減るから配慮しろよ、とストを起こす人たちを
使いたくないと思わせるだけなんじゃないでしょうか?

逆に言うと、ストを起こせば待遇が上がるのなら、
日本のアニメ業界でもストライキを考えた方が良いんじゃなかろうか。

そして視聴者側にも意識高く作品に向かっていただくようお願いしたところで
長い文章の締めとします。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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