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崩壊してるのは作画か視聴者か? [アニメを作る]

アニメ好きを自負する方々なら聞いたことがるであろう
『作画崩壊』という言葉。

字面の通り、作画が崩れてしまうという
絵で映像を作るアニメーションならではの、
品質に対する批難の言葉です。

そこに突っ込んだ記事を見つけたので読んでみてください。

『プリキュア手掛けたアニメ監督が語る「作画崩壊」真の理由
                      揚げ足取りの場合も』

                       DIAMOND online より

記事を書いたフリーライターのかたは
アニメの現場を擁護するために書かれたのだと思いますが、
少し言葉が足りない、というか、
かなり小さい視点で語っておられることが
私には残念に映りました。

コメントを寄せた監督さんの言っていることに間違いはありません。
ただ、部外者にわかりやすいよう、要点を絞って話しています。

あるいは、受け取る側(ライター)の理解が追いついていないのかもしれません。
または、読み手(読者)の理解力を考えて記事を要約しているのかも。

ここで語られている『作画崩壊』とは、
主にキャラクターやプロップ、メカ等の
フォルムやディテールに関することです。

キャラが似てない、くらいならまだ知らず、
目がロンパリ(片目がロンドン、片目がパリを見ているからロンパリ。
視線が左右でバラバラになってることを指す)だったり、
片手の指が6本あったりといった全く許容できない間違いもあったりしますが、
それは”作画”全体の中の一部でしかありません。
そして、誰にとっても判りやすいイージーミスでもあります。

それが起こる理由は記事の中にある通りですが、
実はこれが理由の全てという訳でもありません。

昨今のアニメを見るに、
絵そのものはもちろん、映像の作り方自体もガタガタな作品は少なくないのです。

ところが、視聴者はそれに気付かない。

だから深夜のアニメは無くならない。
だって、品質が低くても見てくれる人がいるから。
さらに言えば、安く作れるのでクライアントにとって都合が良い。
あわよくばヒット作になって金儲けができる。

…甘いよ、作る側も見る側も。

作画崩壊をはじめとした品質の低下が起こる理由は、
実は後継者を育てられない業界の体質によるところが大きいのです。

アニメーションは「総合芸術」ですから、
関わる人は全ての工程において「クリエイター」であり、「アーティスト」です。
そもそもセンスが必要な『創作活動』で、それをなんとか商業ベースに載せているわけです。

”品質”と”利益”という、ともすれば相反する事柄を出来るだけ高いレベルで達成するには
それなりの知識や経験が必要です。
ま、そんなのアニメに限ったことじゃないですけど。

残念なことに、この知識や経験を後世につなぐことができていないのです。
しかも、後継者そのものの数が少ない。

それはやはり、制作費が安いことに行き着く。
状況を改善するには、桁を一つ上げないとダメでしょう。
3割り増しとか、倍増とかじゃあ話になりません。

逆にいうと、そんなに少ない予算で現場は動いているのです。


さて。
ここからは矛先を視聴者に向けます。

あなたは、ひどい映像を見せられているのですよ。

え? かわいいキャラが喋っているから満足だって?

それ、そもそも「アニメ」って言って良いのかな?

都市伝説のように業界で語られている話があります。

『キャラを動かしたら絵が崩れた。それを見た視聴者から
 「俺の推しになんてことするんだ!」とお叱りが来た。
 なので、キャラは動かさずに”止め口パク”で見せるようにした』

馬鹿げた話ですが、おそらく実話です。
アニメーションなのに動かすと文句を言われる。
可愛い女の子の絵に、お気に入りの声優が声を当てればそれで満足、
なんて言ってる人を、アニメファンとか呼ぶのは
私は悔しいです。

私はアニメを作って、観てもらう側の人間ですから、
視聴者に対して文句を言うべきではないでしょう。でもね、
より良い品質を求めてクリエイトしたことに何も反応がなく、
本質と違うところで批難されるのはなかなか辛いものなんです。

これは視聴者にも考えてほしい。
『何が”良いアニメーション”なのか、その基準は何か?』

放送されているアニメ作品の中には、
レイアウトがメチャクチャでパースが出鱈目なカットや
それ以前にカットの繋ぎが成立してなかったり、
カメラ位置が十分に吟味されていなかったり、
大体にして画面の作り方が稚拙で情けない表現になっているものがあるのです。
(絶対に作画崩壊しない『3Dアニメ』でも、これらは避けられません)

あくまでも私見ですが、そんな残念な作品の割合は半分ぐらいはあるのでは。。。

キャラ崩れを見て「作画崩壊だー」なんて騒ぐ前に、
あなたの、アニメーションを評価する基準を振り返って欲しいと、
作り手として思うのです。

その行き着く先は、アニメ作品の減少です。
それとともに、弱小プロダクションは淘汰されていくでしょう。

それも悲劇ではありますが、
実際、アニメなんて儲かる商売ではないのです。

日本の給与水準と同じく、
アニメの制作費はこの30年、上がっていません。
いや、もっと前から変わっていないかもしれません。

韓国や中国へ下請けに出すことでなんとか成立させていましたが、
もはや人件費は日本が一番低いとさえ言える状況です。
そう遠くないタイミングで業界が破綻します。

アニメーションを作る側と、
アニメーションを観る側の両方に
大きな意識改革が必要です。
できるだけ早く。

もうそんなに時間はありません。

作画崩壊が起こる理由は冒頭の記事にある通り、予算の問題です。
でも、もっと深い視点でアニメーションを観ることができれば、
作品自体が許容できないレベルのものもあるということです。

ただ、それ自体がダメということではありません。
より良い作品にはより高い価値を認めましょう。

小学生の描いた絵と
AIの描いた絵と
ピカソが描いた絵、
全て同じ価値ではありません。
評価の基準は各々で違うのです。

見る側もそれを理解してほしいし、
理解しないままではずっと酷い映像を見せられることになります。
(酷いアニメを見てもそれに気づかない人は、
 中途半端な批判なんてやめた方が良い。恥ずかしいから)

遠回しに言えば、
作画崩壊の理由の一端を見る目のない視聴者が担っているとも考えられるのです。



あああ、
解りにくい文章になってしまいましたが、
言いたいことの要旨はこうです。

『本当に酷い映像を正しく「ヒドイ」と言える目を持たないと、
 損をするのは視聴者自身だよ』

「作画崩壊」という言葉を使いたいだけの”俄ファン”は
永久に損をし続けます。
そうならないように、観る側もしっかり見識を高めた方が良いと思います。
単に「個人の好み」だけでなく、客観的な評価ができるように。



う〜んやっぱり、
私が言って良いことじゃないな、コレ。

忘れてください。。。
(でも記事は消さない)
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